自動・他動・等尺性抵抗運動検査を用いた損傷組織の見分け方|運動検査②

運動検査

はじめに

運動検査①で紹介した、自動・他動・等尺性抵抗運動検査により、収縮性組織と非収縮性組織に加わる機械的ストレスの考えを応用し、各々の検査を組み合わせ、収縮性組織と非収縮性組織のどちらが損傷しているのかを見分け方をモデル図を用い紹介したいと思います。

自動・他動・等尺性抵抗運動検査によって組織に加わる機械的ストレス

まずは、自動・他動・等尺性抵抗運動検査によって組織に加わる機械的ストレスを整理します。

自動運動検査では、収縮性組織と非収縮性組織に機械的ストレスが加わります

他動運動検査では、非収縮性組織に機械的ストレスが加わりますが、収縮性組織には機械的ストレスは加わりません

等尺性抵抗運動では、収縮性組織に機械的ストレスが加わりますが、非収縮性組織には機械的ストレスは加わりません

各々の検査と組織に加わる機械的ストレスを下の表にまとめました。

自動運動他動運動等尺性抵抗運動
収縮性組織
非収縮性組織
自動・他動・等尺性抵抗運動検査で組織に加わる機械的ストレス
+:機械的ストレスを受ける組織  -:機械的ストレスを受けない組織

自動・他動・等尺性抵抗運動検査を用いた、損傷組織の見分け方

自動・他動・等尺性抵抗運動検査の結果を組み合わせ、収縮性組織と非収縮性組織のどちらが損傷しているのかを鑑別する方法を紹介します。

収縮性組織の損傷

自動・他動・等尺性抵抗運動検査で、以下のような結果が出た場合には、収縮性組織に損傷があると考えます。

  1. 自動運動にて運動方向側に痛みが出現した場合⇒運動方向に位置する収縮性組織の損傷
  2. 他動運動運動方向と反対側に痛みが出現した場合⇒運動方向と対側に位置する収縮性組織の損傷
  3. 等尺性抵抗運動運動方向側に痛みが出現し、筋力が低下している場合⇒運動方向に位置する収縮性組織の損傷


1~3をモデル図で表すと下のようになります。

収縮性組織の損傷

肘関節に置き換えて考えてみたいと思います。

  1. 自動運動検査:肘関節屈曲て、上腕前面に痛みが出現
  2. 他動運動検査:肘関節伸展にて、上腕前面に痛みが出現
  3. 等尺性抵抗運動検査:肘関節屈曲にて、上腕前面に痛みが出現


1~3の結果より、上腕に位置する肘関節の屈筋の損傷が推測できます。

等尺性抵抗運動検査の結果と組織の損傷度合い

等尺性抵抗運動検査では、抵抗をかけたときの痛みの有無と筋力をみることで、収縮性組織の損傷の重症度や神経損傷を判断することができます。

痛み筋力組織の損傷
あり強い筋もしくは腱の小さな損傷
あり弱い筋もしくは腱の大きな損傷
なし弱い神経損傷/筋もしくは腱の完全断裂
なし強い正常
等尺性抵抗運動検査の結果と組織の損傷

非収縮性組織の損傷

自動・他動・等尺性抵抗運動検査で、以下のような結果が出た場合には、非収縮性組織に損傷があると考えます。

  1. 自動運動検査において、運動方向の対側に痛みが出現し、その痛みが可動域制限がある部位に近づくに従って生じた場合⇒運動方向の対側に位置する非収縮性組織の損傷
  2. 他動運動検査において、運動方向の対側に痛みが出現し、その痛みが可動域制限がある部位に近づくに従って生じた場合⇒運動方向の対側に位置する非収縮性組織の損傷
  3. 等尺性抵抗運動では痛みが出現しなかった場合⇒機械的ストレスなし


1~3をモデル図で表すと下のようになります。

非収縮性組織の損傷

肘関節に置き換えて、考えてみたいと思います。

  1. 自動運動検査:肘関節屈曲にて、肘関節後方に痛みが出現
  2. 他動運動検査:肘関節屈曲にて、肘関節後方に痛みが出現
  3. 等尺性抵抗運動検査:肘関節伸筋の収縮にて、痛みなし

1~3の結果より、肘関節後方の関節包などの非収縮性組織、肘関節の伸筋(拮抗筋=非収縮性組織)の損傷が推測できます。

まとめ

自動・他動・等尺性抵抗運動検査を用いた、組織の損傷の見分け方をモデル図を用い説明しました。

今回紹介しましたモデル図は、自動・他動・等尺性抵抗運動検査実施するときだけでなく、動作観察の際にどの組織にどのような機械的ストレスが加わっているかをイメージする際にも応用できますので、是非ご活用ください。

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