自動・他動・等尺性抵抗運動検査により組織に加わる機械的ストレス|運動検査①

運動検査

はじめに

運動検査には、骨運動学の視点から生理学的運動を分析する自動運動検査、他動運動検査、等尺性抵抗運動検査と関節運動学の視点から関節包内運動を評価する関節副運動検査があります。

自動運動検査は自動ROMテスト、他動運動検査は他動ROMテスト、等尺性抵抗運動検査は測定肢位を変えたMMTとリハビリ専門職の学生や新卒療法士でも、十分実施できる基本的な検査です。

これらの検査は、目的や検査結果を正しく捉えることで、対象者の痛みや可動域の制限の原因となっている組織を明らかにする役立つため、非常に重要な検査として位置づけています。

今回は、自動運動検査、他動運動検査、等尺性抵抗運動検査によって組織に加わる機械的ストレス(メカニカルストレス)に関する理解を深めるためにモデル図を用いて説明していきたいと思います。

収縮性組織と非収縮性組織

自動運動・他動運動・等尺性抵抗運動検査で組織に加わる機械的ストレスは、運動器を収縮性組織と非収縮性組織の2つに分けて考えると理解しやすくなります。

収縮性組織とは、運動時に筋収縮に関与する組織で、筋・腱・筋腱移行部・腱骨膜結合部が含まれます。

下の図で赤く染色された部分が、収縮性組織になります。

黒澤和生:痛みとマニュアルセラピーⅠ-軟部組織に対する治療-を改編

非収縮性組織とは、収縮性組織以外の自ら収縮しない組織で、骨、靱帯、関節包、筋膜、神経、硬膜、神経鞘、血管、滑液包のことを指します。

下の図で、黄色に染色された部分が非収縮性組織になります。

黒澤和生:痛みとマニュアルセラピーⅠ-軟部組織に対する治療-を改編

関節のモデル図

生理学的関節の構成組織である筋腹、腱、骨、関節包・靱帯を表したモデル図を下に示します。

この図では、筋腹と腱が収縮性組織、骨と関節包・靱帯が非収縮性組織にあたります。

このモデル図を用い、自動運動検査、他動運動検査、等尺性抵抗運動検査により、組織に加わる機械的ストレスについて解説します。

自動運動検査

自動運動検査は、対象者に随意的な運動を行わせることで、要求された運動を行う能力とその運動を行う意思があるかどうかを確認し、関節可動域および筋の収縮機能をみる検査です。

自動運動において、主動作筋の収縮性組織には、筋の収縮による機械的ストレスが加わります。
拮抗筋の収縮性組織は、他動的に伸張されるため、非収縮性組織として捉えます。
よって、拮抗筋の収縮性組織には、組織が伸張される機械的ストレスが加わります。

運動方向と対側の非収縮性組織には、組織が伸張される機械的ストレスが加わります。

運動方向と同側の非収縮性組織は、弛緩するため機械的ストレスはかかりません

下のモデル図で、自動運動検査において、収縮および伸張による機械的ストレスを受ける組織を濃色、弛緩し機械的ストレスが加わらない組織を淡色で示しましたのでご確認ください。

自動運動検査のモデル図

他動運動検査

他動運動検査は、対象者がリラックスした状態で、検者が関節の全可動域にわたって動かす検査です。

他動運動では、運動方向と対側の非収縮性組織と収縮性組織に、組織が伸張される機械的ストレスが加わります。

この時、運動方向と同側の非収縮性組織と収縮性組織は、弛緩しているため機械的ストレスはかかりません

下のモデル図で、他動運動検査において、伸張による機械的ストレスを受ける組織を濃色、弛緩し機械的ストレスが加わらない組織を淡色で示しましたのでご確認ください。。

他動運動検査のモデル図

等尺性抵抗運動検査

等尺性抵抗運動検査

等尺性抵抗運動検査は、関節周囲の非収縮性組織への機械的ストレスがかからないようにするために、関節の位置を可動域の中間位(安静肢位/緩みの肢位)で、対象者に随意的な強い等尺性収縮を行わせる検査です。

等尺性抵抗運動検査では、 収縮性組織に、筋の収縮による強い機械的ストレスが加わります。

非収縮性組織と拮抗筋の収縮性組織は、弛緩しているため機械的ストレスはかかりません

下のモデル図で、等尺性抵抗運動検査において、収縮による機械的ストレスを受ける組織を濃色、弛緩し機械的ストレスが加わらない組織を淡色で示しましたのでご確認ください。

等尺性抵抗運動検査のモデル図

安静肢位/緩みの肢位

抵抗性等尺収縮検査は、下の安静肢位(緩みの肢位)で実施します。

関節 安静肢位/緩みの肢位
椎間関節 屈曲と伸展の途中
下顎関節 軽度開口位
肩甲上腕関節 55°外転、30°水平内転
肩鎖関節 生理学的肢位で上腕を体側に休めた位置
胸鎖関節 生理学的肢位で上腕を体側に休めた位置
腕尺(肘)関節 70°屈曲位10°回外位
腕橈関節 完全伸展位、完全回外位
近位腕尺関節 70°屈曲位、35°回外位
遠位腕尺関節 10°回外位
橈骨手根(手)関節 中間位で少し尺側偏位
手根中手関節 外転と内転の中間、屈曲と伸展の中間
中手指節関節 軽度屈曲位
指節間関節 軽度屈曲位
股関節 30°屈曲位、30°外転位、軽度外旋位
膝関節 25°屈曲位
距腿(足)関節 10°背屈位、内反と外反の中間位
距骨下関節 各可動域の途中
横足根関節 各可動域の途中
足根中足関節 各可動域の途中
中足趾節関節 中間
趾節間関節 軽度屈曲位

David J.Magee:運動器のリハビリテーションの機能評価より引用

まとめ

自動・他動・等尺性抵抗運動検査によって、収縮性組織と非収縮性組織に加わる機械的ストレスをモデル図を用いて説明しました。

臨床場面で、自動・他動・等尺性抵抗運動検査を実施する際に、モデル図を頭に思い浮かべると、どのような機械的ストレスがどの組織に加わっているかをイメージしやすくなるので、ぜひご活用ください。

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