マンガロールでの地域リハ活動|後編

地域リハ入門

前編に引き続き、30年程前にインドのマンガロールで展開された地域リハビリテーション活動を紹介いたします。

医療に対するアプローチ

まずはじめに、医療に対するアプローチを紹介いたします。
マンガロールでは、診療所にできる患者さんの行列を減らすために、集落毎・村毎に以下のような取り組みを実施しました。

集落レベル

集落レベルでは、各集落にいる薬草医に研修を行い西洋医学の知識を身につけてもらい村のかかりつけ医になってもらいました。

そして、集落にいる病人の10人中8人を薬草医が治しました。

薬草医が治せない場合、どうしていたのでしょうか?

村レベル

村レベルでは、村毎に保健センターを設置し、診療所にいた看護師を配置しました。

薬草医にかかり治らない住民は保健センターへかかり看護師が治療にあたりました。

保健センターにかかった病人の10人中8人は看護師が治しました。

これらの試みによって、診療所で治療が必要な方は、100人中4人に減らすことができました。

診療所の行列の変化

集落レベルでは薬草医が軽度の患者を、村レベルでは看護師が中等度の患者を治療できたので、治療に専門的な治療が必要な重度の患者のみが診療所に集まることになり、診療所の負担が減りました。

また、来院患者一人一人に、十分な時間をかけ、しっかりとした治療をできるようになりました。

加えて、軽症患者は自分の集落や村で治療できるので、リヤカーで診療所までつれていく必要がなくなり、労働者が減らずに済むというメリットも生まれました。

このようにして、診療所の行列は解消しました。

日本ではどうでしょう?

日本でも、軽症者や特殊な検査・治療が必要ない方は近所のかりつけ医にかかり、重症者やより専門的な検査・治療が必要な方は大きな病院にかかることを促すような仕組があります。

しかし、国民にしっかりと理由が伝わらず、制度のみが先行しているので、大病院に風邪等の軽症の患者が集まるなど、うまく機能していないのが現状です。

前編でも説明しましたが、制度をうまく機能させるには、社会背景やその制度を運用する理由をしっかりと説明し、住民を含む関係者全員で意志統一を図る事が重要です。

https://funda-reha.com/mangalore-first-part

機能訓練に対するアプローチ

次に理学療法士による機能訓練に対するアプローチついて紹介します。

地域リハ活動を始める前の機能訓練

マンガロールでは、地域リハ活動をする前は、機能訓練の対象者は診療所まで時間をかけて移動し、療法士による個別機能訓練を受けていました。

筋力を維持するには週1回、向上するには週2回、ある程度の負荷をかけてのトレーニングが必要です。

しかし、診療所で療法士による個別機能訓練を受けた場合、あまりにも対象者が多すぎて、必要な訓練の頻度・負荷量を提供できない状況でした。

地域リハ活動による取り組み

地域リハ活動により、診療所にいた理学療法士が村々を巡回し、ボランティアに機能訓練の方法を指導し、村のボランティアに機能訓練を行ってもらう方法を導入しました。

その際、ボランティアでも安全で確実に実施できるよう、簡単な内容のプログラムを提供しました。

これにより、ボランティアによる機能訓練ですむ方は、自分達の村で適切な頻度や負荷量の機能訓練を行うことができるようになりました。

理学療法士による専門的な個別機能訓練が必要な方は、診療所や遠くの病院で理学療法士による機能訓練を集中的に受けることができるようになりました。

住民主体の介護予防

マンガロールでの機能訓練の考え方は、現在国内で進められている住民主体の介護予防に取り入れられています。

館山市では、行政、地域包括支援センター、リハビリ専門職が協力し、住民運営による体操教室の立ち上げ支援を実施しています。

予防の啓発や栄養に対するアプローチ

3つ目に、予防の啓発、栄養面に対するアプローチを紹介します。

マンガロールでは、村で目にウロコができるという病気が流行していたそうです。

ここで、「目にウロコができて困っている」という村の住民の声を診療所の職員が拾い上げました。

そして、目にウロコが発生する病気の予防に効果のある葉っぱを病気が発生した村の中で広める広報活動をしました。

このように、広報活動を行う際には、住民の声を拾い上げ、本当に住民が困っていることに対し、的を絞って行うことが重要になります。

館山市では

館山市では、元気がでる体操を実施しているグループに対し、行政や地域包括支援センターが、出前相談のような形で介入し、地域の困りごとを拾い上げ、地域の課題を解決につなげていくことが期待されています。

お金へのアプローチ

最後にお金へのアプローチについて説明します。

マンガロールでは、農業で自給自足の生活をしており、現金収入がありませんでした。

この問題に対し、2軒に1頭分出資し共同で飼育することにしました。

これにより、牛の乳を搾り牛乳を売ったり、産まれた子牛を売って現金収入を得る手段を得ることができました。

その後、どんどん牛が増えて牧場ができ、さらに収入が増加し、金銭面でも裕福な村に生まれ変わりました。

マンガロールの地域リハ活動

以上のような活動が、約30年前にインドのマンガロールで地域リハビリテーションの活動として行われていました。

マンガロールでは、医師・看護師・理学療法士とった資源が絶対的に不足していました。

しかし、ここであきらめることなく、地域にある資源や人材を徹底的に洗い出し、問題を解決するための仕組みを考え、薬草医やボランティアといった地域にもともと存在していた人材を育成し、結びつけることで、障害=生活を営む上での困りごとがあってもいきいき暮らすことができるような、地域・社会を作ることに成功しました。

地域リハビリテーションとは

ここで、地域リハビリテーションの定義をおさらいしましょう。

地域リハビリテーションとは「どんな国のどの地域でも、資源や人材は不足しています。それを嘆くのではなく、地域で活用できる施設・サービス・物や人材を徹底的に洗い出し、それでも不足なら育成し、それらを結びつけることによって、障害があっても、いきいき楽しく暮らすことができるように、社会、地域を変えていく活動」です。

昔は発展途上国の活動でしたが、最近では先進国でも活用されております。

地域リハをわかりやすく表現すると

地域リハを分かりやすく表現すると、「地域にいる人・ある物を用いて、障害があってもいきいき楽しく暮らすことができる社会を作る活動」と言い換えることができます。

地域リハビリテーションという言葉をこのように捉えるなら、「高齢者は増える」「若い人がいない」「専門職は足りない」「お金は無い」といった館山市の少子高齢化問題を解決することができるかも知れません。

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