5回立ち上がりテストとは
5回立ち上がりテストは、椅子から5回立ち上がる際にかかった時間を測ることで、下肢の筋力を調べる検査です。転倒発生のリスクやADL障害の発生リスク評価にも用いることができ、経時的に測定を実施することで対象者の変化を捉えることができるため、臨床場面でよく用いられるテストです。
「30秒椅子立ち座りテスト」よりも負担が少ないため、高齢者に立ち座りテストを行う際には、本テストが実施しやすいテストと考えられています。
測定のポイント
準備
- ストップウォッチ
- 椅子
後方転倒に備え、椅子は壁に接するなど固定しやすい場所にセッティングします。
場合によっては、検者または補助者が椅子を押さえて固定します。
測定方法
測定項目
最大努力で立ち上がって座る動作を5回反復し、これにかかる時間(秒)を測定します。
測定開始は「対象者の身体が動き始めた瞬間」、測定終了は「対象者が5回目に完全に直立したとき」とします。
開始肢位
椅子座位で、股・膝関節90度屈曲位、上肢は胸部の前で腕を組んだ肢位を取ります。
終了肢位
上肢を胸部の前で腕を組んだまま、直立位を取ります。
測定回数
測定回数は1回とします。
複数回測定する場合には、平均値もしくは最小値を代表値とします。
教示の方法
- 「手をつかわずに、できる限り速く、椅子から5回連続で立ち上がっていただきます。」
- 「腕は、常に胸の前で組み、立ち上がるときは背筋を伸ばし、膝を完全に伸ばしてください。」
- 「座る時にあまり勢いよく座ると身体を痛めるので注意してください。」
- 「スタート」
測定時の注意点
- 検者は、転倒に備え、リスク管理を十分に行います。
- 対象者の立ち上がった回数は、検者が大きな声でカウントします。
- 腕を胸の前で組んで立ち上がりができない場合には不可とします。
- 開始のタイミングが理解しづらい場合には、検者が声掛けによって、スタートの合図をします。
- 対象者が十分に直立位をとらない状態で座位動作に移ろうとする場合には、途中で中止し、指摘を行なってから再度実施します。
- 明らかに実施方法が異なる場合には、練習を実施してから本番を行います。
解釈のポイント
情報の特性
5回立ち上がりテストは下肢筋力の評価として用いられ、計測された時間(秒)が大きければ大きいほど、下肢筋力が低下していることを意味します。
また、フレイルの判定や転倒発生・移動制限などのリスク判別の基準として用いられています。
基準値・カットオフ値
フレイルの判定 |Study of Osteoporotic Fracture(SOF)
上肢を使用せずに椅子から5回連続立ち上がれない場合には、フレイルと判定
転倒発生に対するリスク判別
12秒以上、もしくは15秒以上でリスクあり
移動制限、死亡、入院の各リスク判別
17秒以上でリスクあり
掲示用ポスター
掲示用のポスターを作成しました。
パワーポイント形式でダウンロードできますので、ご自由に編集してご活用ください。
参考
- 島田裕之:高齢者理学療法学,医歯薬出版,2017年
- 佐々木洋平:通所リハビリテーション利用者における 2 種類のフレイル評価結果の関連性,理学療法-臨床・研究・教育 第23巻 第1号,2016
コメント