握力は、上肢筋力または粗大筋力評価の1つとして実施され、フレイルやサルコペニアの基準としても用いられており、高齢者の体力評価の中でも広く行われている検査です。
今回は、握力の測定方法や結果の解釈について紹介したいと思います。
測定のポイント
必要な器具
握力計
測定方法
測定項目
- 最大努力での手の握る強さ(kg)
- 測定した側(右or左)
測定肢位
- 両足を自然に開いて安定した直立姿勢をとります。
- 人差し指の第2関節(PIP関節)が直角に曲がり、握力計のグリップを握れるよう調整します。
- 測定肢は、強く握れる側(原則利き手)にて計測します。
測定回数
- 1回
- 複数会測定する場合は、平均値もしくは最大値を代表値とする
教示方法
(検者)「握力を測定します。どちらの手が握りやすいですか?」(原則的に利き手で実施)
(対象者)「〇〇側ですね。」
(検者)「身体を腕につけないように、手を握ってください。握るときは握力計を動かさないようにしてください。それでは準備ができたらはじめてください。」
(検者)「頑張って!頑張って!頑張って!もうひと踏ん張り!」
(検者)「はい、OKです
注意点
- 測定中に手を振らないようにします。
- 握力計のデジタル表示は外側に、腕は自然に伸ばし、手は身体に触れないようにします。
- 高血圧や心疾患(特に手術既往歴)などがある場合には、運動が禁忌でないことを確認し、「息を止めずにフ―っと息を吐きながら握ってください」と追加の教示を行います。
- 運動禁忌や測定当日の血圧があまりにも高い場合(収縮期血圧180mmHg以上、拡張期血圧100mmHg以上)には中止します。
- 座位での測定方法もあるが、姿勢による変化はみられないとの報告もあり、わが国では立位での測定が主流となっています。対象者の立位保持能力に合わせ、坐位での測定を選択する場合もあります。
年代別の握力
スポーツ庁による令和2年度体力・運動能力検査の年齢別の握力測定の結果です。
測定結果を対象者にフードバックする際にお役立ていただけます。
解釈のポイント
握力の低下は、地域在住高齢者に対しADL障害、死亡率上昇リスクなどの様々な有害事象に関係していることが多く報告されています。また、脳卒中の発症リスク、アルツハイマー病・認知症の発症リスクとの関連も報告されています。
基準値としては、フレイルやサルコペニアの判定に用いられ、それぞれの判定の流れにおいて、「筋力低下」を決めるにあたり、握力の値を参照して用いられています。
フレイル判定の下位項目
男性28kg未満、女性18g未満(J-CHS,2020)
サルコペニア判定の下位項目
男性28㎏未満、女性18㎏未満(Asian Working Group for Sarcopenia,2019)
掲示用ポスター
掲示用のポスターを作成しました。
パワーポイント形式でダウンロードできますので、ご自由に編集してご活用ください。
参考
島田裕之:高齢者理学療法学,医歯薬出版,2017年
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