はじめに
運動検査には、骨運動学の視点から生理学的運動を分析する自動運動検査、他動運動検査、等尺性抵抗運動検査と関節運動学の視点から関節包内運動を評価する関節副運動検査があります。
今回は、関節包内運動と副運動検査の基礎知識を紹介したいと思います。
副運動とは
副運動とは、関節包内の転がり、滑り、軸回旋、圧迫、離開などの運動を指します。
正常な関節では、骨運動に伴い関節包内の転がり、滑り、軸回旋といった、副運動が組み合わさり起こってます。
骨運動で、振り子運動が起こる際、骨は角運動し、関節包内は転がり運動と滑り運動が起こります。
この時、転がり運動は骨運動と同じ方向に動きます。
滑り運動は、運動する面が凹か凸かによって運動方向が異なり、凹凸の法則に従って動きます。
関節可動域制限による滑りの障害
副運動が正常に起こるためには、適度な関節の遊びが必要になります。
関節の遊びが少なく、関節可動域制限を生じている時に、骨を他動的に動かすと、関節包の緊張により滑り運動が制限されるため、関節副運動は転がりが主となります。
このとき、関節面に過度の圧迫が加わるといわれています。
よって、関節可動域制限の治療を行うときには、必ず関節副運動検査を実施し、関節の遊びの程度を評価する必要があります。
関節副運動検査
離開
離開は、治療面に対して直交方向に力を加え、関節面を引き離す検査です。
この運動は、関節包全体に機械的ストレスが加わるため、可動域と痛みの出現に注意して検査を実施することがポイントになります。
結果の解釈
運動範囲については以下の通りに解釈します
- 過剰な運動範囲があった場合は、支持組織の損傷を示します。
- 運動範囲の制限があった場合、支持組織の拘縮や滑り運動の制限があることを示します。
痛みについては以下の通りに解釈します。
- 痛みが増強する場合、結合組織の損傷を意味します。
- 痛みが減少する場合、関節面の損傷があると考えます。
圧迫
圧迫は、治療面に垂直に力を加えて、2つの関節面を近づけて痛みの有無をその変化を評価します。
結果の解釈
圧迫の検査結果は以下のように解釈します。
- 痛みが増強する場合、関節面の損傷があると考える
- 痛みが減少する場合、関節の潤滑が改善した可能性があると考える
滑り
個々の関節特有の関節面に応じた治療面に平行な方向に力を加え、検査を実施します。
この際、凹の関節面に対し、凸の関節面の滑りを検査するときは、関節角度が変化しても治療面は一定となります。
一方、凸の関節面に対して凹の関節面の滑りを検査するときは、関節角度によって治療面の方向が変わるので注意が必要となります。
結果の解釈
滑りの検査結果は、以下のように解釈します。
- 過剰な滑りがある場合、支持組織の損傷や過度な緩みが考えられ、その方向への関節モビライゼーションは禁忌とします。
- 凸側の関節面の滑りが制限されている場合、反対方向の骨運動制限の原因となると考えます。
- 凹側の関節面の滑りが制限されている場合、同側への骨運動制限の原因となると考えます。
まとめ
今回は、 関節包内運動を理解し、関節副運動検査を正しく実施するための基本的な知識を紹介しました。
臨床場面で、関節副運動検査を行う際に、今回紹介したモデル図をお役立てください。
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