はじめに
三角筋は、肩部に位置する三角形の筋で、鎖骨部(前部)、肩峰部(中部)、肩甲棘部(後部)から、構成されています。
肩関節の機能障害には、前方タイトネスや後方タイトネスがあり、三角筋と隣接組織との滑走不全が深く関わっています。
後方タイトネスは、三角筋の肩甲棘部(後部)と棘下筋・小円筋・上腕三頭筋などの組織の滑走不全が原因の一つになると言われています。
また、前方タイトネスは、三角筋の鎖骨部(前部)と大胸筋の滑走不全が原因の一つになると言われています。
臨床場面では、前方・後方タイトネスの改善を目的に、三角筋と隣接組織の滑走性を促すために徒手療法を用いる機会が多く、正確に三角筋と隣接組織を触り分ける能力が求められます。
今回は、三角筋を正確に触察するための指標を紹介したいと思います。
三角筋のマッピング
下は、右肩部を前方からみた写真で、三角筋(赤)の鎖骨部と肩峰部がマッピングされています。
下は、右肩部を後側方からみた写真で、三角筋(赤)の肩甲棘部と肩峰部がマッピングされています。
三角筋を触察するためのランドマーク
三角筋の下端の指標
上腕骨の前外側面の中央部(★1)を確認します。これが、三角筋の下端の指標となります。
鎖骨部の内側下縁の指標
鎖骨の中央部からやや外側の部位(★2)を確認します。
ここに、三角筋・大胸筋・鎖骨からなる三角形状の小さな間隙である三角筋胸筋三角が位置します。
三角筋の下端(★1)と三角筋胸筋三角(★2)を結ぶ線を想定します。
この線が、三角筋の鎖骨部の内側下縁の想定線となります(想定線1)。
触察の際には、想定線上に触察指を置き、隣接する大胸筋・上腕二頭筋との境界を確認しながら、三角筋を触れていきます。
肩甲棘部の内側下縁の指標
肩甲棘の内側端(★3)を確認します。
肩甲棘の内側端(★3)と三角筋の下端(★1)を結ぶ線を想定します。
この線が、三角筋の肩甲棘部の内側下縁の想定線になります(想定線2)。
触察の際には、想定線上に触察指を置き、隣接する棘下筋・小円筋・上腕三頭筋との境界を確認しながら、三角筋を触れていきます。
鎖骨部と肩峰部の境界の指標
肩鎖関節の前端(★4)を確認します。
鎖骨部の内側下縁上で、三角筋の下端よりやや近位の部位(★5)を確認します。
肩鎖関節の前端(★4)と鎖骨部の内側下縁上で三角筋の下端よりやや近位の部位(★5)を結ぶ線を想定します。
この線が、鎖骨部と肩峰部の境界の想定線になります(想定線3)。
触察の際には、想定線上に指を置き、鎖骨部と肩峰部の境界を触れていきます。
肩峰部と肩甲棘部の境界の指標
肩甲棘の下縁で肩峰角から2横指内側方の部位(★6)を確認します。
肩甲棘部の内側下縁上で三角筋の下端よりやや近位の部位(★7)を確認します。
肩甲棘の下縁で肩峰角から2横指内側方の部位(★6)と肩甲棘部の内側下縁上で三角筋の下端よりやや近位の部位(★7)を結ぶ線を想定します。
この線が、肩峰部と肩甲棘部の境界の想定線になります。
触察の際には、想定線上に指を置き、肩峰部と肩甲棘部の境界を触れていきます。
おわりに
三角筋を触察するためのランドマークを紹介しました。
正確に三角筋を触り分けるには、今回紹介した視標に加え、三角筋および隣接する筋の3次元的な位置や形状といった解剖学の知識、触察手順、筋を触知しやすい指の動かし方、三角筋に特徴的な触察感を知ることが重要となります。
これらの情報を得るための、書籍および運動器系体表解剖セミナーを主催している研究会を紹介しますので、触察技術の向上にお役立てください。
たてやま整形外科クリニックのスタッフのみなさんは、TOC体表解剖勉強会の予習・復習にお役立てください。勉強会の様子は、下のリンクよりご覧いただけます。
今回もご覧いただきありがとうございました。
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